ここにボクはいる。

2004年3月31日
「オトナはオトナのフリをしているコドモ」
誰かの言葉。そう思う。特に、たくさんの泣き顔を見た今日思う。

今日、ある人が亡くなりました。
カレ(カレというには女性らしく、カノジョというには男だから微妙だ
なぁ)は、ゲイの世界に初めて入った日に会った人です。
今まで出逢った人の中で、人として、一番「キレイ」だった人です。
中性的な人です。
ボクにとっては、友達であり、先輩であり、家族であり、母親であり、
最愛の人です。一杯の愛をカレからもらいました。
カレは愛であふれていて、色々な人に愛を注いでいました。それでも
尽きない愛をもっていました。こんなキレイな人には今まで会ったこ
とがありません。サクラのピンク色に淡いオレンジの光をあてたよう
な色の雰囲気をもっています。穏やかな色。キレイな部分しか見てい
ないからかもしれません。とてもキレイだったんです。
カミングアウトした友達に一番会わせたい人でした。

最初に妹さんからカレの携帯で電話がありました。何故ボクにかけて
たのかは、未だに分りません。履歴か何かを辿ってきたらしいのです
が、分りません。他の人にはかけたのでしょうか。ともかくボクにか
けてきてくれました。メールも出していたみたいです。RJさんのとこ
ろにきたみたいです。
ボクはゲイの知っている人全員に知らせました。一番知らせたくない
内容です。HKさんにかけた時にはたまらなくなり、泣きました。
そしてまた、知らせ続けました。ボクの役割のように思えたからです。

その晩、カレに会いました。今にも起きてきそうです。初めてシタイ
を見ることになりました。でも、シタイには思えないのです。
「実はウソなのよ」って言って、起きてきそうです。4月1日にはま
だ早い、と言った人もいましたが、ボクもそう思います。

やはり泣きました。
今まで泣きたくても出なかった涙が、とめどなく流れてきます。
多分、今日この時のために、出なかったのでしょう。尽きることなく
流れます。泣きたくないのに流れます。くもって、顔がよく見えません。
それでも、笑おうとしました。悲しい顔なんて、きっとカレは嫌いです。
だから、泣き顔で笑いました。涙が流れているということを無視した
くて、涙を拭いませんでした。でも拭わないと、どうしようもなくな
りました。
HRさんとRJさんと話をしました。HRさんはボクの頭を優しくなでなが
ら、「そらが一番繋がりが深かったのかもね。ものすごく可愛がって
くれてたもんな」と言うのです。可愛がられて、愛されているのは分
っていました。みんなにも注いでいました。特に可愛がってくれたの
かもしれません。そう思いたい、エゴもあります。カレの中で、ボク
が一番だと。そんな気持ちを満たしてくれた言葉をキッカケに、涙と
ともに、声も出ました。頑張って止めたのですが、出ました。泣かな
と決めたのに、かっこつけて、大人ぶろうとしたのですが、ダメでし
た。こんなにもカレを愛していたのです。

こんなにもアナタを愛しています。

カレの自宅で、少し騒ぎました。みんなで騒ぎました。カレは湿っぽ
いのは嫌いでしょうから。ご家族の方には迷惑だったかもしれません。
ごめんなさい。今は自分勝手でいさせてください。

この日、家族以外で、ボクたちが一番長くカレに接していたのでしょう。
いつものバーのようになりました。常連さんばかりの時間になりまし
た。「いつものお店のようにやってね」と妹さんに言われました。そ
れに近い状態にはなったと思いますよ。

カレの部屋にも初めて入りました。とても男の部屋の雰囲気ではあり
ません。そして、初めて会った時の思い出の品もありました。
カレは今でもソコに座っているのではないでしょうか。

店から出る時にいつも言ってくれました。「今日もありがとね」って。
ボクはあまり「ありがとう」って言えてないですよ。もっと言いたかっ
たのに。

カレは優しすぎるのです。家族にも仲間にも。仲間の死を見るのが嫌
で先にイッタのかもしれません。家族に迷惑をかけたくないから、あ
んなにも早くイッタのかもしれません。悲しむ時間もあまりくれませ
んでした。ボクは告別式にも行けないじゃないですか。

カレの自宅から帰る時に、HRさんは言いました。「これで会えるのは
最後だよ」って。だからもう一度、カレの顔を見に行きました。
まで寝てるんですね。いい加減に起きてウソだと言ってくれませんか。
今日はそのウソを責める人はいませんよ。きっとカレのことだから、
一日勘違いしていると許してくれますよ。ね?

死ってなんなんでしょう。カレはただ、眠り続けます。
ボクはここにいます。ただカレとはもう、少なくともここでは、
会えないだけです。友達に紹介できないですね。
色んな人に自慢したかったですよ。こんなキレイな人と知り合いだっ
てことを。こんなにも愛をもらっているよって。

写真の交換の約束、守れなかったですね。もっと早く、ボクが動いて
いればよかったですね。こんなにも別れが早いなんて思ってもいなか
ったから。

今は泣きますね。少し休んでいます。
そして、笑って、頑張ります。

愛しています、ずっと。

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